あとがき

　この物語の外伝はこれで二作目となりました。

　今回の話は本編より４００年余り前のものです。

　ファンタジックな雰囲気を持たせたかったので、中世騎士物語風の世界にしました。やはり、本編が機械兵器による戦いなので雰囲気だけです。ファンタジーワールドは又別の話として書くつもりでいますので…。

　改めて、主人公はジークフリートことゼオ・ヴィルヘルムです。

　全く見せ場がなかったので残念ではあったが、これには少し訳ありなのです。

　各章ごとに中心人物があり、初めにプロフィールがあります。前半の章では中心人物、すなわちプロフィールの人物が初めから姿を見せていますが、後半からは様子が変わって行きます。そう、謎解きと平行して、誰が中心人物であって、章頭のプロフィールの持ち主であるのかが判って来ます。

　実に、主人公の影が薄かったのは、ゼオの秘密のためだったのです。兄と知りながらも戦う趙流元と、兄と知らずに戦うレオンハルト。彼らは皆哀しい男たち…。

　戦争という舞台の上で、悲劇を背負って再会し、それが又、新たな悲劇となり、それが繰り返されて行く。

　戦争と言われるもの自体が悲しみを生んで行くよりも、その渦中にあって戦う人々の様々な人生がより悲しみに溢れているのでした。

　レオンハルトは父カルロを討ち、流炎もシュラム公爵を討ったろうか。

　リオやライアス、ケイ達は封建的な体制をどれだけ崩したろうか。

　この戦争には勝者は見えない。やはり、悲しみを生むだけだったのだろうか…。

　彼らの死が、後の人々の励みとなることを祈って…。

　　　　　　　　 1989年 9月21日　　早乙女秀麗

1991年1月16日　入力　／　1998年５月29日　HTMLアップロード