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Sacrifice of Daughters

 



ケイ・ワルトハイマー     31歳
ダルニア特殊諜報部隊「ワルキューレ」  隊長

 



 宙陽暦7415年7月28日―――

 エリア0、アスガルドの中心部にひしめくビル群。それらは全てダルニア自治議会政府関係のものである。そして、それらの周囲を政府関係者らの宅地区画が取り巻いている。その上、外壁から中心部までは”河”と呼ばれる濠が五重に取り巻き、跳ね上げ式の橋が架かっていた。現状況では検問になっているが、状況次第では橋の中央から跳ね上げられる。

 中心区画は特に”ユグドラシル”と呼ばれ、又、その中央に位置するダルニア議事堂を”ワルハラ”と称す。その北側に隣接しているのがダルニア自治軍(旧地方軍)の総合指令部のビルであった。呼称は”ヴェルダンディ”である。

 その”ヴェルダンディ”の地下三階にダルニア特殊諜報部隊”ワルキューレ”の本部がある。この階には聖騎士団の団長とワルキューレのメンバーだけが自由に行き来できた。聖騎士団の本部は地下二階にある。

 一台のジープがそのビルの地下駐車場へと入って来た。

 それに乗った二人は白の衣に全て赤の武具を身に着けていた。ライトメイル、アミュレット、ヘルメット、マスク、マント。彼女達こそワルキューレであった。鎧の左上胸部に個人ナンバーが白で記されている。運転手は”2”、もう一人は”3”である。

 ジープは車両用エレベーターに入って停止する。

 ここで、身分のチェックが行われる。

 ジープに乗車したままでコンピューターによって簡単に検査を受ける。どの車もそうなのだが、IDカードの挿入スロットを持っていて、そこへ、IDカードを差し込むだけで、身分のチェックは終了する。ジープから赤外線送信により、車の所属とIDカードに関するデータがエレベーター管理コンピューターへ送られる。

 彼女らの場合、カードはすでに挿入してあったので、キーボードから”B-3”と指示を送るだけであった。

 地下三階の駐車場へ降り、ジープを所定の位置に止め、フロアーに向かう。

 そして、フロアーに入る前に最終の個人IDのチェックがある。ここでは一人ずつIDカードと手形のチェックを受ける。彼女らの場合は簡単に通れるが、ワルキューレ以外の者はこの後、テレビ回線を通じて隊長にチェックされることになる。

 その最終の検問を通過して、上昇用エレベーターに乗り込む。実を言うと、これら地下駐車場は各フロアーの中間に位置するのである。しかも、駐車場とフロアーは一階分の空間(大地)を挟む。故に、二階分上に戻るのだ。すなわち、ワン・フロアーは4階分の差があるのである。

 さて、余談はこれくらいにしておこう。

 ワルキューレの二人が乗ったエレベーターはゆっくりと上昇し、彼女らをB-3のフロアーに送り届ける。

 フロアーに着いた二人は指令室に向かう。

 程なく指令室の前に着き、ここでも一人がカードを通す。

 チェッカーの窓に”Completed”と表示され、ドアが開く。

 中には一人の女性がモニターの前に座っていた。彼女はヘルメットとマスクを外している。このフロアーではそれを許されていた。

 二人もヘルメットとマスクを外す。

「ご苦労様、リズ、ロミナ…」

 立ち上がって、ケイ・ワルトハイマーは二人を迎えた。

「トレーは二台手配しました。民間のですから保証はなしですよ」

 先頭に入室した№2のエリザベス・ハウマンである。

「いらないわよ。どうせ敗走に使うんだから」

 そう答えながら、ケイはモニターやコンピュータの電源を落として行く。

「ワルキューレの極秘データは一〇〇%破壊できたわ。驚くでしょうね」

「クーレマン陸軍総長がデータ回線を開けて欲しいって言ってましたよ」

と、ロミナ・ケレス。

「そうね。総指令部も一時間以内にOKをだすでしょうね」

 ケイは全ての電源を落とし終えた。

「今更、何を見せたって戦局は変わらないのに…。行きましょう」

 彼女は己のマスクを着け、ヘルメットを手に持った。

 エリザベスとロミナもマスクを装着する。

 三人は指令室を後にし、下降用エレベーターで駐車場まで降りた。

 それぞれがジープに乗り、三台のジープは同時に車両エレベーターに乗る。車両エレベーターはジープで四台分の大きさがあるのだ。

 地下一階に着くと、ケイを先頭にエリザベス、ロミナと続いてビルを出た。

 彼女らはフリーパスで検問を駆け抜ける。

 アスガルド内では五〇㎞以上のスピードは普通出せない。が、総指令部の通達があれば一〇〇㎞まで出せるようになる。これらもジープ内のコンピュータがIDカードで管理を行う。

 もちろんワルキューレは一〇〇㎞制限であった。

 二〇分で彼女らはアスガルド(エリア0)を出た。

 二台のトレーが待ち構えている。

 運転手は陸軍の兵卒であった。

「私達は先ず、ブリュンヒルトに寄って味方と合流する。四時間、いや、三時間でブリュンヒルトに入れ」

「了解」

 陸兵二人がケイに答える。

「では私達は先に行く。気を付けて…」

 そう言い終わる間もなく、ケイはアクセルを強く踏み込んだ。

 エリザベス、ロミナも遅れじとアクセルを踏む。

 三台は時速200㎞で突き進む。

 それらに遅れて、二台のトレーが一二〇㎞で走っていた。

 

 二時間後、ケイと二人はブリュンヒルトに到着した。

 彼女らは聖騎士団の詰所へと車を向ける。

 現在、詰所には聖騎士団の十九番隊”ルングニール”があった。ワルキューレの他のメンバーもそこで待っているはずだ。

 ケイ達がそこに着くやいなや、今や遅しと待っていたワルキューレ達がドッと掛け出してきて出迎えた。

「My Mother!」

「Oh,My Daughter!」

 ケイが彼女らに答える。彼女達はメンバー以外の人間が居る所や任務中は互いを名前で呼び合うことはない。

「Come on!My hungerd pretty kits!W9、here!」

 ケイの呼び声に答えて、ワルキューレ達がジープに乗り込む。彼女の隣には胸に白字で”9”と記されたワルキューレが、後部シートには銀字の”A”と白字の”1”が乗り込んだ。

「Let's go!Lunch Party!」

 三台はけたたましく発進する。

 騎士団の男達はしばし呆然と彼女らの後を見送っていた。

 急いで聖騎士団の詰所を離れると、車内は妙に沈黙した。

「イェルナ、あの人は何て…?」

 ケイが隣の女性に声をかけた。

「ログム派のジョアン・ハイネス邸で合流せよと…」

「何っ!?」

 これには三人が驚いた。

「ジョアンですって…」

「はい。そこで、ラグナロックが待つ、と…」

「どう言うことだ。よりによって、ジョアン・ハイネスだと?」

 全く予期していなかっただけにケイも開いた口がふさがらない、といった感じだ。だが、今は彼を信じるしかない。

「急ぎましょう」

 ケイはスピードを上げた。

 後部にいた”SA(シルバー・エース)”こと副隊長のエリーヌ・クロムウェルが後続車に着いて来いと合図する。

 三車はブリュンヒルト北部のジョアン・ハイネス邸へとアクセルを踏んだ。

 

「えらく、のんびりするんだな」

 まもなく正午を迎えるというのに、リオが出発の準備もせずにいるのを見て、ジークフリートが言った。

「そうね。貴方達は準備万全?」

「もちろん」

 ジークフリートはソファのリオを見下ろしている。

「なら、良いわ…。私はここに居るわ」

「ならば、我々は出発します」

「どこへ?」

 リオは言いながら初めてジークフリートの方を見た。

「それを聞きに来たのです」

「もう忘れたの?」

「聞いてませんが…」

「違うわよ。私は昨日言ったわ。助っ人は二人だって…」

 ジークフリートは間髪入れずに答える。

「ライアスとランバスではないのですか」

「ええ、違うわ」

「では…」

「あっ、そうそう。ライアスもここからはデュラハンと別行動ですから」

 話を外らす、リオ。

「ギュゲス…、いや、ライアスも?お二人でハネムーンですか?」

「まさか…。彼はシヴァの総軍団長(ロード・アドミラル)よ。…貴方には隠し事は必要ないわね、ジークフリード。貴方が私達を裏切ったりするはずがない」

「余計なことは言わんでもらいたい」

 ジークフリートは怒りを露に剣を抜き払い、リオの目の前に突き付けた。

「仕舞いなさい、ジークフリード。その剣は私を斬る為に与えたのではない」

 リオの剣幕にその剣を引く。

「フッ。貴様に貰った覚えはない。このノートゥングの剣は俺の親父の形見だ」

「そうね。…座りなさい。作戦の全てを話しておくわ」

 そう言われて、ジークフリートは黙って彼女の向いへ座った。

 そして、リオが静かに口を開いた。

「貴方は本当に…彼らに復讐を?」

 ジークフリートは目だけで応える。

「出来れば、この戦争が終わるまで、待って欲しいの」

「何故です」

 リオは即答をためらい、一度視線を落とした。

 そして、わずかな沈黙の内に決心を固めると静かに語りだす。

「嫌な夢を見たわ。幼い兄弟が剣を振るって戦い合い。一方がもう一方の首を跳ねたわ。私の目の前で…。私は泣きながら、死んだ子供にしがみついていたわ。あれは私の子供だったのよ、きっとそう…。そんな気がしてならないわ…。私は……」

 リオは声を震わせて言葉に詰まった。

「死んだのは兄の方ですか?」

 ジークフリートの穏やかな声に、リオは静かにかぶりを横へ振る。「分からない…。でも、死んだ子供の方が大切な人に見えたわ」

「すなわち、味方である俺だと…」

「…世迷い言と思われるかも知れないけれど…。何故か貴方にだけは話す必要がある様な気がして…。あの子が、生き残った子が、最後に言った様な気がするのよ、今でも…。”Good-by my Mother, Please say hello for me to Regret.(「後悔」によろしく。)”…そう言って、私に剣を振り降ろした」

「後悔(リグレット)?」

「そうよ。貴方ならそう言わないし、私にその剣を振り降ろしたりしない」

「俺ならこう言うか、”to Worth”(生き甲斐)」

 そう言ってから淋しく笑う、ジークフリート。

「そう…。そうかもね…」

 復讐こそがジークフリートにとっての生き甲斐(ワース・オブ・マイン)。

 リオは最初にジークフリートと出会った日を思い返していた。すると、フッと笑いが沸き起こった。

「可笑しいか…」

「いえ、違うのよ。私はあの時のことを思いだしたのよ。貴方と初めて会った…」

 ジークフリートの表情も一変に明るくなる。

「ああ、そんな昔の…」

 そう言いながら彼も思い返していた。

 それは彼が十歳の時に出場した武術大会であった。

 十二歳以下の部で優勝した彼は、大会の主催者の一人であるアロマ・レイヴァノーンの娘によって表彰を受けたのである。

 リオはこの時八歳であった。

「おめでとう、ジークフリード・ヴェサム」

「ジークフリートだ」

「同じじゃない、ジークフリード」

「何!」

 子供の些細な喧嘩であった。

 今はもう遠い記憶の一つであるはずなのに、二人の脳裏に鮮明に甦える。

「貴方とこんな風に思い出を語って、笑い合えるなんて、嘘の様だわ。ジークフリード・ヴェサム…」

 そう言って、彼を現実に引き戻す、リオ。

「その名前はとっくに捨てた」

「じゃ、今は何て…?」

「知ってるんだろ。だから、俺はここに居る」

「フフッ。そう言うことね」

「さて、俺がここにいる用件を済ましてくれないか」

 ジークフリートは話を戻した。

「そうね。私は取り敢えず、夜までここに待機するわ。デュラハンにはバシェロへ向かってもらう。ニヴィス・ハイリィと敵を挟んで討つことになるわ」

「デュラハンだけでか?」

「もちろんニッドホグも行くし、助っ人もいるわ。それに、ランバスがジョアン・ハイネスの所へ行ったわ」

「ログム派が動くのか」

「これはあてにしないで、ジョアンは臆病だから」

「動いてもあてにはできんよ」

「そうね」

 ジークフリートがリオに笑いをもたらす。

「で、ライアスはシヴァの全軍でアスガルドを落とす。これは今夜十二時に決行。もちろん、これまでにバシェロは占領を終えて、貴方もニヴィスとアスガルドへ向かっていて欲しいわ」

「そうか…。で、その助っ人ってのは何だ。まだ聞いていないが」

「そうね。そろそろ来るかと思ったけど…。実はね。私も詳しくは知らないのよ。ニヴィスが秘かに手配してくれたのよ。バシェロまで手引してくれるそうよ」

「ニヴィスが?あのおっさんがか?」

 と、その時、邸内が突然騒がしくなった。

「ライアスが帰って来たようね…」

「いや、敵の様だぞ」

 ジークフリートは異様な騒ぎようを見るために窓辺へと立つ。

           ・・

 そこからもハッキリとそれが何者か理解できた。

「ワルキューレ!見つかったのか!?」

「行きましょう」

 リオの声に彼が振り向いた時には、彼女の影がドアの向こうへ消えて行った。

 彼は彼女を追って部屋を出た。

 

 ケイはワルキューレの十一人を引き連れ、堂々と邸内へ入ることが出来た。ライアス土門と共に足を踏み入れたためである。

 大広間でデュラハンとワルキューレが対峠した。

 お互いに驚きは隠せないでいる。

「ようこそ、まさか貴方達が来て下さるとは思ってもみなかったわ」

 リオがデュラハンの前に立ち、ケイと向かい合った。

 二人が握手を交わす。

「久しぶりね、リオ」

 ケイがそう言うと、リオは目を丸くして驚いた。

 ケイはヘルメットを脱ぎ、マスクを取った。

「私はワルキューレ隊長、ケイ・ワルトハイマー。憶えていて…?」

「ケイ!」

 リオは思わず、彼女に抱きついた。

 ワルキューレの他のメンバーもヘルメットとマスクを外す。

 美女ぞろいの噂が嘘でもなく、噂だけでもないことを知ら示した。

「リオ…」

 他の数人も喜びの声を上げている。

 ケイから身を離すと見知った顔と、リオは次々と抱擁を交わした。

「エリーヌ?エリーヌ・クロムウェル」

 リオは己の記憶を確かめながらSA(シルバー・エース)のエリーヌ・クロムウェルを抱き締めた。

 そして、W1(ホワイト・ワン)のナターシャ・クラリィ・ハーンズ、W2(ホワイト・ツー)のロミナ・ケレス、W3(ホワイト・スリー)のリズことエリザベス・ハウマン、W4(ホワイト・フォー)のアイーダ・フラナガン。

「立派になったわ、アイーダ」

 そう言って、アイーダから離れると他のメンバーにも挨拶して行く。

「お名前は?」

「エリカ・チェンです、先輩(シスター)」

 エリカ・チェンはアイーダに倣って、リオをそう呼んだ。

 それから、エリカの双児の妹、ドリス・チェンと、W7(ホワイト・セブン)のバレリィ・エディス・ニューマン、最年少のアビゲイル・グラムとイェルナ・ヘンダーソンへと声をかけて行く。

 そうして、又、ケイの前に戻った。

「貴方達がまだ現役だなんて…」

 複雑な心境でリオはそう言った。

「この情勢ではしかたない。軍は私達を篭の中の鳥にしておきたいのだ。”鎖につながれた犬”と言うのが正しいわね」

「でも、鎖ごと逃げられたって感じね」

「皮肉な話だわ、彼らに取ってはね…」

 彼女らは軍に自由を奪われた身なのである。

 軍の最重要機密を知り、ブラックリストの作成も手掛けるワルキューレである。当然と言えば当然であった。

 彼女らの動きは常に総指令本部の監視下にある。IDカードが発信する特殊な電波を通信衛生で中継し、総指令部ビルに送られるのだ。ダルニア自治軍総指令長官とダルニア聖騎士団団長の二人だけがこれを自由に見ることが出来る。もちろんワルキューレのメンバーは例外だ。

「軍が私達の行動を知るのは時間の問題。コンピュータが回復すれば全てが理解される」

と、ケイ。

「急いだ方が良い。検問をしかれたらやっかいだ」

 ライアスがリオとケイに向かって言った。

「そうね。行きましょう。ライアス、私も行くわ、皆と一緒に…」

 リオは懐かしい顔ぶれと今離れると、二度と再び会えないような気がしていた。

 ライアスが止めるのも聞かず、彼女は武具で身を固めた。

「アスガルドで会いましょう」

 そう言われて、とうとうライアスも説得を諦めた。

「判ったよ。ワルハラ城で君を待とう」

「ありがとう」

 二人は軽いキスで別れを惜しむと、リオはすぐさま皆の待つ外へ出て行った。

 出発は速やかに行われた。

 ケイの乗るジープを先頭に、デュラハンのトレー、ジープ、ニッドホグのトレー、ジープの順で行く。

 リオは出発前に情報部の二人、スミュルナとセスを降ろした。

 スミュルナが以外に頑固な所を見せたが、

「この作戦が終わったら、明日にでも会おう。ここで待っててくれ」

の、ジークフリートの一言でスミュルナは首を立てに振った。

「本当ですね。生きて、返って来て下さい…」

 そう言って、スミュルナは涙を流したのだった。

 五台の車両が順々にドモン邸の門をくぐって出て行く。

 リオはイェルナと武具一式を交換し、先頭のジープに乗り込んだ。イェルナはもちろんデュラハンのトレーに乗り、ニヴィスから聞いた作戦について話をした。

 そうして、一行は検問に到着した。通常の検問であればフリーパスである。

「ワルキューレだ。負傷兵を迎えにバシェロへ行く」

と、ケイ。

「トレーは民間のですなァ」

 中年の番兵が言う。

「ならば照合してみろ、陸軍コードで入っているはずだ」

「ハッハッハッ。冗談ですよ。お止めして申し訳ありませんな。行って下さい」

 そう聞いて、ケイはすぐさまアクセルを踏み込んだ。

 検問を抜ければもうブリュンヒルトの外である。

「危ないところでしたね」

と、エリーヌが後ろからケイに声をかけた。

「他に能のない連中だからな」

「ゆっくり行っても日没までに着くわね」

 助手席のリオがヘルメットとマスクを外して言った。

「途中で少し時間を潰(つぶ)して行きましょう」

 ケイもヘルメットとマスクを外すと、後ろの二人も倣った。

「このマスクは私達の一番の象徴かしらね…」

 ケイはそう呟くとマスクを外へ放り投げたのだった。

「私達は自由だわ。素顔でこんな風に風に当たれるなんて、一生出来ないと思ってたわ」

 それを聞いて、リオもマスクを放る。

 エリーヌとナターシャも顔を見合わせて、ケイ達の行動に首肯いた。

 又、二つ、マスクが風に乗る。

「明日の朝陽の下に自由の国を!」

 ケイはそう叫んで、大粒の涙を流していた。

「こんなに嬉しいことはないわ!なのに涙が止まらない!私達は戦場へ行くというのに!」

 ケイの心の叫びに、リオも涙を浮かべて、力強く首肯いて応えるのだった。

 

 



Key Waltheimer     31-year-old
Darniea Especialy Intelligence Agency "Valkyrie"  Mother

 



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