フランス

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June 14, 1998 in Toulouse [曇り]

4時半に起床し、バスでパリ中央のモンパルナス駅へ。そこから旅行者のチャーターしたTGVに乗り、一路5時間をかけてToulouse(トゥールーズ)へ向かう。
数人が前日の夜行で先にトゥールーズへ向かっていた。もちろん、観戦チケットを買うためである。
パリを離れると景色は緑豊かな畑が広がり、地平線が緑とともにどこまでも続いていた。ときどき民家が建っていたが、ほとんどは無人の草原のようであった。
2・3の町を通ったようだが、石壁もはがれ、屋根も押しつぶされた廃村のような小さな町もあった。
途中、少し大きな町には入り、大きな川の鉄橋を渡った駅で2分間の停車をした。Bordeaux St Johnとかいう駅だった。
さて、この頃にはみんなの様子が徐々に応援モードに移っていた。顔や髪にペインティングを始めて、徐々に気分が盛り上がっていた。
私もヘアカラーを借りて、右に青、左に赤を塗って髪を染めた。そして、ポスターカラーで左頬に日の丸を書いてもらう。
ユニホームに着替える人もいたが、浴衣で来るものも数人いたようだ。同行の中にいた女性は浴衣に自前で作ったお札を張り付けた。そのお札1枚1枚に全日本代表の背番号と名前が印刷されていた。どこへ行っても撮影の引っ張りだこで、アルゼンチンサポーターも喜んでいたようだ。
こんな具合で、トゥールーズに着く頃にはみんなの様相は一変していた。
さて、トゥールーズの家々は灰色の壁にオレンジの瓦が載っていた。駅裏からバス乗り場へ出て見ると、再開発のためか廃屋になって崩れた家が工事フェンスの向こうに見える。その手前には新しい道路が造られていた。
バスに乗り込んでから、誰かが徳永英明を見つけた。自転車を組み立てていたらしく、バス停の横から4人ほどで自転車に乗って行ってしまった。
我々はチケットがないためバスで中継スクリーンの会場へ向かう。何人かはスタジアムへ向かって自力で出発した。
バスで第1スクリーンへ向かう途中、街路の市場が長く続いていた。新鮮な野菜や果物が大量に並べられ、買い物客でいっぱいだった。
会場には1時間半前に到着し、整理券を持って順番待ちの行列に並んだ。待ち時間の間、トゥールーズの市民だろうか、賑やかに太鼓やラッパを鳴らして雰囲気を盛り上げてくれた。
会場は屋根のあるスポーツ会館で、正面に400インチほどのスクリーンが設置されていた。両サイドには2階建ての座席があり、我々は後方のスタンドへ登った。
アルゼンチンのサポーターも同会場の左手に陣取った。それでも、数は100人もいなかっただろう。2階席はほとんど空いていた。
14時30分(日本時間21時30分)、日本とアルゼンチンの試合が始まった。前半の10分程は完全に日本のペースで、終始アルゼンチンコーナーでボールを動かしていた。しかし、あっけなく中央突破を許していまい、今大会屈指のストライカー、バティストゥータにキーパーの川口さえも防ぎきれなかった。
その後、日本の攻撃は緩慢で、簡単に前線へのパスを通してしまい、何度も危ない場面を迎えた。後半も日本の攻勢はほとんどなく、キーパー川口の活躍がなければ何点取られたか分からないくらいだ。
当然、川口が活躍すると言うことはそれだけ日本ゴールを脅かされたということだが、それにしても彼の活躍はすばらしかった。翌日の新聞記事を以下に紹介しておく。

FINANCIAL TIMES
(Monday June 15 1998)
Yesterday Argentina emerged from their game with Japan in Toulouse with the expected victory, but not without a few scares along the way. After gaining a first-half lead throuhg striker Gabriel Batistuta (above), Argentina laboured to add to their total. The Japanese goalkeeper Yoshikatsu Kawaguchi put in a sterling performance, his team dominated parts of the game and even came close to equalising during an an exciting second half. Just as with Brazil in their opening game against Scotland, there was insufficient sustained quality in Argentina's play to justify their status as one of the favourites to win the World Cup. But also like Brazil, the Argentinians will be more than pleased with their first three points.

後半の40分を過ぎて、ロペスが登場すると日本の攻撃が立ち直った。時折、敵の縦パスが抜けてくるが、ロスタイムに入ってから3度のコーナーキックがあった。
しかし、再三のチャンスをものにできず、何よりシュートチャンスが少なかった。やはり、集中力が途切れたときの動きの悪さが目立ったのが問題かな。まあ、場数を重ねるしかないのだろう。
さて、試合が終わって会場の外へ出てから、アルゼンチンサポーターと握手を交わした。露店で肉を挟んだバゲット(25F)を買った。これはなかなか美味しかった。缶ジュースは15Fで売っていたがあまりにも高いと感じたので買わずに周辺を見ていると、通りの向かいにスーパーを見つけた。同じものが5Fで売られていて、食料品もいろいろあったので夕食(24F)を買い込んだ。この時点で全財産は20Fと少々になっていた。
続々とスタジアム組も戻ってきた。その時入れなかったと話していた男の子は翌日成田でNHKのインタビューに答えていた。
TGVでパリに向かう間、スタジアム組のほとんどが中に入ったことを知った。チケットは20万円とか30万円とか言われていたが、3000F(\78000)~4000F(\104000)が相場のようだ。
しかし、これだけあっさりとチケットが手にはいるとますます日本旅行の対応に疑問が生じる。それでも、スタジアム組の成功を祝って盛り上がった。しかも、スタジアムから旗とかパンフレットを持って帰ってくれたので、皆喜んでいた。浴衣の女性からお札をいただいて、1つ背中に張ってもらった。
前夜に夜行でトゥールーズ入りした彼もチケットを入手してスタジアムに入ったそうで、夜行の中ではイタリア人やアルゼンチン人などとサッカーの単語だけで会話をしたそうだ。彼を見ていると本当に生き生きとしている。彼自身、パリへ来て、必死にチケットを探す人の姿を見て、行動するしかないと感じたそうだ。そのおかげで、今までの自分にないほど積極的に行動できたと言っていた。
ホテルに戻ったときには日付が変わっていた。


Next Day

Written by Shurey